コロナ禍におけるB2Cコンシューマー業界の再編成

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ここ最近、「B2Cコンシューマー業界の再編成」という言葉をよく耳にする。日米のマーケットプレイヤーの経営難、統合、民事再生などが、コロナ禍以降、増えている現象だ。米国ではJ.C.ペニー、J.クルー、ニーマン・マーカス、ブルックスブラザーズ、またGGIホールディングス(ゴールドジムの経営企業)等が経営難に追い込まれたことは、まだ市場でも古くないニュースである。日本のマーケットでもレナウンや三陽商会等、これまでお家元家業のリテールをこなしてきたプレイヤーが厳しい状況に陥っている。

反対に、難しい経済環境の中でうまくいっているのはどんな企業か? 先日の日経新聞では、世界の株式時価総額に大きな変化が起きていることが紙面をにぎわせていた。例えば、動画コンテンツ配信大手の米ネットフリックス。同社は、2018年5月にウォルトディズニー社の時価総額を超えている。また「東南アジアのテンセント」と呼ばれるシンガポールのシー・リミテッド社は、2020年に時価総額6兆円に達し、インドネシアの銀行バンク・セントラル・アジアの時価をも超えた。もはやこうした一部の急成長企業以外、一般コンシューマー業界に勝機はないとうことなのか?

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個人消費に占める割合は約25%
「不要不急」の需要が支える日本経済

一方で先日、非常に面白い記事を目にした。コロナ禍に入ってから、ある教授が「不要不急」の消費に関する国内経済の規模を算出したそうだ。記事によると、日本経済の多くは不要不急、つまり余暇や不要な品の買い物で成り立っており、生きていくために本当に必要な消費(ここでは特に 医療・交通・食品を指す )が占める市場の大きさは限られている。

2018年の個人消費約300兆円のうち、「余暇」と呼ばれる アウトドア、フィットネスクラブ、ゲームセンター、カラオケ等 レジャー領域の経済規模は約72兆円で、なんと全体の約25%を占める。一方で生活の骨幹を支える食品は約300兆円のうちの24%、交通・通信は16%という調査結果だ。個人の消費とは関係ないところでも、外食産業は約25兆円、 ファッション関連産業は約10兆円、 家電は約7兆円、百貨店は約6兆円の経済規模を持つという。いずれも小さいとは言い難い経済規模である。つまり「不要不急」の消費こそが、現在の日本経済を支えているといえる。

 

業界再編のキーワードは「セルフ経済圏」と「DX」

さらに、コロナ禍における業界再編成について、よく見かける二つのキーワードがある。一つは「セルフ経済圏」、もう一つはDX(デジタルトランスフォーメーション)である。
「セルフ経済圏」に関しては、例えば先日、セブンイレブンの2020年6月期の売上が、コロナ禍で売上が減少していた3月以降、初めてプラスに転じたという記事を目にした。同社は顧客単価を上げるため商品幅を増やしたり、プライベートブランドの幅を広げ、プチ贅沢な商品のラインナップを増やしたりしたことがキーだとしている。

また、主に乳幼児・幼児に向けたベビーストローラーや家具を販売する某外資系プレミアムブランドの社長に直接お話を聞いたところ、2020年4-6月の売上が前年比で伸びたそうだ。コロナ禍によって家で過ごす時間が増え、「おうち時間」のクオリティー向上を狙った住居環境の充実といった消費行動が目立ちはじめたのが背景のようだ。
またこんな例もあった。日本のメーカー・トビー社が販売する、「バーミキュラ」のフライパン。同社は「手料理と生きよう」をブランドスローガンとして掲げているが、こちらのフライパンはなんと、2020年7月時点で予約3か月待ちの状況だという。食・住環境の充実に向かうトレンドを代表するニュースである。

上記の「セルフ経済圏」に付随するのが、次のDXである。「三密を避ける」「不要不急の外出をしない」状況下でも、おいしいものを作りたい、住まい環境は充実させたい。そんな消費者にとって、頼みの綱はネットショッピングである。実店舗に行けない・また行くのに抵抗がある分、オンラインできちんと交通網が整備されている企業が伸びている。日本のニトリや、米ウォルマートがその最たる例である。

経済活動や消費行動のデジタル化が進み、テクノロジー業界が昨今の世界をリードしていく産業であることはすでに誰の目にも明らかである。ただし、これからの“ウィズコロナ”と呼ばれる経済活動の中においても、トレンドや形を変え、不要不急である経済活動が戻ってくることも間違いはない。「おうち生活」充実のトレンドやプチ贅沢を志向する消費者トレンドと、そこに携わるメーカーおよび小売り業態が今後どのように形を変えていくのか。今後も目を離せないところである。

 

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参考記事)

 


秋山 結希 Yuki Akiyama
Randstad professionals associate director

【プロフィール】
2012年より人材業界に従事し、多くのB2Cメーカー企業を対象にバイリンガル人材およびマネジメント層の案件を手がける。外資系消費財メーカーのカントリーマネジャーやダイレクターレベルの案件等を手掛ける他、B2C 業界の営業・マーケティング・企画・E-commerce 等を扱うチームを率い、ジュニアからミドル層の案件までコンシューマーメーカーや広告代理店等B2C 業界の幅広い求人に対応。

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