雇用維持・確保の観点から例外的対応も派遣法、「労使協定方式」の一般賃金水準

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「局長通達」は10月下旬に発令される見通し

 厚生労働省は10月14日、派遣元が「労使協定方式」を採用する際に用いる来年度適用分の一般賃金水準について、「原則として直近の統計調査を用いる」とする一方、一定の要件を満たし、労使で合意した場合は「今年度適用している水準を用いることも可能」とする例外的対応も示しました。雇用の維持・確保を主眼に置いた措置で、同日開かれた労働政策審議会で了承を得ました。局長通達として公表される一般賃金水準を巡っては、「新型コロナウイルスが経済と雇用に与える影響を見極めたい」として、厚労省が今夏の公表を延期し運用のあり方を検討していました。

 今年4月に施行された改正労働者派遣法は、いわゆる「同一労働同一賃金」に伴うもので、派遣労働者の賃金や待遇は「派遣先均等・均衡」か「派遣元の労使協定」のいずれかの待遇決定方式が義務化されました。
 この選択制2方式のうち、「労使協定方式」を選んだ場合には、局長通達の一般賃金水準より同等以上であることが要件。施行初年度の現在運用されている水準は「2018年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」(賃構統計)と、「2018年度職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」(ハロワ統計)の2種類が基になっています。通常であれば、毎年6~7月をメドに来年度適用分の局長通達が公表されます。

 「労使協定方式」を選択している事業所は、厚労省調査の速報値で約9割を占めています。この日、同部会で了承された運用方法を整理すると、一般賃金水準については「原則として、直近の2019年(度)の統計調査を用いる」とする一方、雇用維持・確保の観点から「例外的な対応として現在の18年(度)の統計調査を用いることも可能」としました。
 例外的取り扱いを用いる要件として、新型コロナの影響による事業の縮小状況などを具体的に示して労使で十分に議論することや、労使協定に例外を用いる理由を明確に記載することなど、計4項目を定めています。
 今回の対応に労働者側委員は、「あくまで例外であって、ふたを開けてみれば大半が適用を受けたということがないよう、労働局への申請時などで厳正にチェックし、指導監督を実施してほしい」と強く求めました。

 事務局の厚労省は「大原則は19年の新しい統計。一方で、コロナ禍で派遣労働者の雇用は傷みやすい環境にあると認識しており、一定の要件をしっかり確認したうえで今回の例外的な対応を講じたい」と答えました。
 使用者側委員は「急激な景気悪化の環境下で、労使協定方式の一般賃金水準として前々年の統計結果を用いることは、足元の実態を適切に表しておらず、中小企業に多大な影響が出る。今回の例外的対応は妥当と考える」と述べ、派遣元に目的と趣旨の丁寧な周知を求めました。厚労省は「今回の措置が事業者にきちんと伝わるように、各都道府県労働局にきめ細かな説明と周知をするよう指示する」と回答しました。

 このほか、労使協定方式の趣旨を踏まえ、派遣労働者の長期的なキャリア形成につなげるため、「現行の労使協定を基礎として労使で十分議論することが望ましい」とする基本的考え方を局長通達に盛り込む方針です。
 加えて、労使の議論の前提となる過半数代表者の選任手続きについても、取り扱いを整理して公表する考え。厚労省調査の速報では、労使協定書の労働者側の締結は、労働組合が5%、過半数代表者が95%となっています。
 また、「ハロワ統計」に比べてサンプルサイズが小さい傾向がある「賃構統計」について、現在の「単年度統計の集計」から「過去3年分の統計を用いて算出」した一般賃金水準に切り替えます。この対応によって、変動幅が狭まる効果があります。局長通達は10月下旬に発令される見通しです。


取材・文責
(株)アドバンスニュース

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